「魚住くんシリーズ」の三巻目。 いきなりシリーズ三巻目を薦めるのはどうだろう。 自問から始めるのも何なんだが、私にこのシリーズを購入させることを決定付けたのがこの話だった。とりあえずこの話を読んでみて、キャラクターのそれぞれをもっと知りたいと感じたなら、前後を読んでみるのもよいのではなかろうか。そんな読み方もできるのではないかと今は考えている。 免疫について研究している魚住は、研究室の先輩の縁で病院のクリスマス会の寸劇で天使の役をやらされる。そこで「さちの」という少女と知り合った魚住は、彼女がHIV感染者であり、父は亡く母も行方不明で叔父に引き取られており、学校でも孤独であることを知る。HIVに感染してはいるものの普段の生活には滞りのないさちのの現状をありのままに受け止めてくれる魚住に彼女は懐き、年の離れた友人となるが…。 雑誌掲載時は前後編だったのだそうだが、その前編のラストにあたる部分が衝撃的だ。 そして、後編の最後の方のエピソードを読んで、ぼろぼろ泣いた。 場をわきまえて我慢することもできなかった。 本を読んで、あんなに泣いたのは、本当に久しぶりのことだった。 その後の話で、それ以外の要因もあって魚住が自殺を図る場面を読むと、いつでも死はキレイゴトではないのだと感じる。 生きるということもつらくて苦しくて、決して楽なことではないが、死ぬということだって同じだ。 死ねばすべての苦しみから解放されると思うこともあるかもしれないが、死ぬこと自体が大いなる苦しみではないか? 確実な死を目指してリストカットを図る魚住の描写は、背筋が寒くなるほど怖い。辛い。痛い。 死は彼を心配する友人達によって実現しなかったが、本気で死のうと思う人間の執念を感じて、本当に怖い。 だけど、それだからこそ、そこを乗り越えることができた彼を心から祝福したいのだ。 もし、このお話を読んで気に入ってくださったなら、続きもぜひ読んでほしい。 自分が愛されずに育ったと感じる人に、読んでもらいたい話だ。
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