タイトルは、マグリットの絵から取られたもののようです。 この絵をご存知でいらっしゃいますか? 私は、これが絵のタイトルであることを知ってからずっと、あふれるような光に満ちた、明るい印象の絵であるように感じていました。 ところが、数年前に渋谷でマグリット展をやっていた時に、実物を拝見する機会に恵まれたのですが、その絵は私の予想とは裏腹に、落ち着いた印象の、穏やかな雰囲気の素敵な絵でした。 そんなふうに、日常の中に、でも確かに存在する、鮮やかな一瞬を切り取ったお話たちが、ここに収録された短編たちなのではないかと思います。 「遠野」という一族の物語を短編の連作で綴ったものです。多分、この一冊で終わりではないはず。 この一族は、超能力を持っており、それゆえ付け狙われたり狩られたりという身の危険を感じるような切迫した感じが漂うものもありました。 個人的に気に入ったのは「学校」の話です。 先日紹介した『六番目の小夜子』とは少し趣の違う感じで、また受ける印象が違います。恩田陸さんは、いろいろなタイプのお話を書くことができるのですね。続きのお話も、ぜひとも読みたいところです。←もう出ているという話も聞いたような…。 以前にNHKでドラマにもなりました。……が、見るのが苦痛で2話くらいしか見れなかったような気がします。 あまり映像化にはむいていないのかもしれない、と思ってしまうのは妙な思い入れがあるからでしょうか。
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初めて読んだ恩田作品です。 そして、とても気に入っている恩田作品です。 『夜のピクニック』と1,2を争う作品かもしれません。 デビュー作ということもあって、まだまだ発展途上な印象も受けるけれども、とても素敵な作品だと思います。大好きです。 関根秋の通う高校には、ひとつの伝説がある。 3年に一度、文化祭で「サヨコ」の劇を上演しなくてはならない、というものだ。一番初めに「サヨコ」を上演した年、非常に大学進学率がよかったとかで、再上演することになるのだが、その年の文化祭でサヨコを演じるはずだった女生徒が交通事故で亡くなってしまって中止に。その年の大学進学率は史上最低だったとか。以来、密かに代々受け継がれているという。それはある古びた鍵に受け継がれている。サヨコを象徴する花瓶を入れたロッカーの鍵を受け継ぐだけの「サヨコ」もおり、劇を上演する年にあたった「サヨコ」は今までに5人いた。「サヨコ」の劇を上演した生徒、しなかった生徒、女子も男子もいた。 今年は、六番目の「サヨコ」の年。 その四月、サヨコという名をもつ転入生が現れるところから、物語は始まる。 もともと私は「サヨコ」という名が好きだ。 この名を聞いてすぐに思い出すのは吉田秋生『吉祥天女』の「小夜子」。 どうしてだろう、この二人は私の中で同じイメージだ。 そういえば、『吉祥天女』の小夜子も転入生だった。 恩田陸はひょっとして彼女をイメージしながらこの作品を生み出したのかもしれない。 理知的で、美人で、さまざまなものに秀でている沙世子。 彼女が転校してきてからの一年を描く物語の結末は、とても鮮やかだ。 「サヨコ」にまつわる謎も、非常におもしろく読み進めることができた。 また、『夜のピクニック』の戸田忍くんに通じるような秋の存在も見逃せない。とても好きなキャラクターだった。 ホラーのようでいて、ミステリらしく、それでいて、さわやかな青春小説の香りを併せ持つ、そんなこの作品は、思春期くらいの人たちにぜひとも読んでもらいたい小説だ。
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おお、これ、吉川英治文学新人賞受賞だったんだ! これは読んでよかったと思いましたもの。早く文庫になってほしい。 ある高校の学校行事「歩行祭」の一日を追ったもの。 読んだきっかけは、『六番目の小夜子』の番外編が収録されているというただそれだけの理由で購入した『図書室の海』に、この話のプロローグにあたる『ピクニックの準備』という短編が収録されていて、それを読んで興味を覚えたこと。まず、そのプロローグだけで私に読む気を起こさせるくらい、芯にある問題が私の好きネタなのだった。 私って、どうしてこう血縁問題ネタ、それも兄姉弟妹ものに弱いんだろう?この話では甲田貴子と西脇融の異母きょうだいである。同い年のきょうだいというだけでも互いの胸の内に宿る葛藤は相当なものであろうに、初めて出会ったのは高校の入学直前の父の葬式で、高校に入学してみると同じ高校なのだった。互いに気にはなるものの、不自然な距離が互いを近づけない。三年になって初めて同じクラスになるが一度も会話を交わしたこともないのに互いに目で追ってしまっていたりする。そうした不自然な距離から「デキている」などと噂されたりする。 そういうときの、二人の心中はどうだっただろう。 「賭け」とまでの想いを込めて、貴子はこの行事に参加する。 このきょうだいを取り巻く友人たちもとても好感が持てる。 私のお気に入りは、融の友人の戸田忍くんだ。「忍」という名は自分でも思い入れのある名なので、生半な人間がこの名を持っていると気に入らないことが多々あるのだが;笑、彼は本当に素敵な人物だった。作中で、彼は「物事には何事もタイミングってものがあるだろう」という。そのたとえに「ナルニア」を出しているのがとても嬉しかった。「ナルニア」は十代の入り口で読んでおくのがいいと言ってくれていたのが、妙に嬉しかった。最近は映画の影響で大分読まれたようだが、本当にその通りだと思う。 結末が本当によかった。 私は、どうも恩田陸はこういう作品が好きなようだ。
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